牛さんの生い立ちに思いを馳せてみよう


ようするに牛肉のパッケージに表示された個体識別番号を読んでみよう、というお話。

個体識別番号

牛肉ってたぶん最もトレーサビリティの進んだ食品のひとつなんではないかと思われますが、牛には一頭々々固有の番号がついていて、生まれてからと畜されるまで異動履歴が管理され、小売店の店頭に並ぶまでその情報がついて来ます。

その番号はWebで検索すると、その個体の異動履歴をすべて見ることができます。つまり公開されています。

牛の個体識別情報検索サービス

で、その検索はここからすることができます。運営は「独立行政法人 家畜改良センター」。

早速昨日買った肉「岩手県産国産牛等級3もも肉ブロック」100g当り333円を検索してみましょう。え?値段はいらない?^^;

個体識別情報を読む

パッケージの個体識別番号検索結果

母牛の個体識別番号検索結果

【個体情報】欄

この子「5197君(一番下の桁はCDなので略)」は2014年7月21日の生まれですね。オネエです。肉牛の雄は大抵去勢されます。肉質が柔らかくなるとか、性格がおとなしくなるとか、理由はいろいろあるんですが、タマ○マをひねりちぎるとか縛って壊死させるとか聞いてるだけで下っ腹が痛くなってきます(脂汗

種別欄を見ると「交雑種(肉専用種×乳用種)」となっており、母牛の識別番号も検索してみると母牛は「ホルスタイン種」となっているので、肉用牛の精子を人工授精したものか、可能性としては受精卵移植もあり、ここからは判断つかないですね。

ちなみにこの識別番号管理はもともとBSE対策で行われているもので、血統(遺伝子)管理のためではないので、卵子/精子が誰のものだったかは問題にされていない、借り腹だろうとなんだろうと直接接触のあった産みの母親が重要なのです。つかそもそも父親なんぞどこにも出てこない、オトーサンの影が薄いのは人も牛も一緒らしい…

【異動情報】欄

  1. 生まれたのは加藤さんのところです。お母さん(ホルスタイン種)も加藤さんのところで生まれていて異動なしですから、加藤さんは酪農家ですね。子供を産まなきゃお乳は出ないわけで乳牛には子供を産ませるわけで、お母さん2歳ですから、この子が最初の子です。次の代の乳牛が必要でなければ、肉牛を産ませて出荷したほうがお得ですから、さっきの「交雑」という話になるのです。
  2. 約1ヶ月、乳離れする頃市場へ出されます。
  3. 市場へ搬入。
  4. その日のうちにセリにかけられました。
  5. 真生畜産さんに引き取られます。真生畜産さんは肉牛を育てる「肥育農家」ですね。
  6. 月齢26ヶ月でドナドナされていきます。標準28ヶ月というので、気持~ち早めかな。
  7. 2016年9月21日と畜です。近頃は「と畜」っていうけど「屠殺」だよね。我々は命をいただいているのです。牛の花子(仮名)の第一子、一郎(仮名)享年2歳2ヶ月でございます。南無南無(-人-)

店頭にて

そうして食肉センターで解体されて枝肉となった一郎(仮名)←しつこい^^; は卸売市場やらなんやらを経て、部位分け・掃除されて店頭に並ぶわけです。大きいチェーンストアなんかでは加工センターで一括処理の場合もあるし、小さい店なら店舗単位でやってたりします。

んでその昨日買った「岩手県産国産牛等級3もも肉ブロック」、加工日は2016年10月7日となっておりまして、と畜日を差し引きすると16日となります。

近頃は熟成肉なんてのが流行ったりもしてまして、牛肉はある程度置いたほうが美味しいというのは知られてきたようです。熟成肉はそれ専用の設備できっちり温度・湿度・衛生管理された中で長期熟成を行いますので、一般の流通経路とは話が違いますけど。

ものの記事によると30日以上が理想なんて書いてますけど、そんだけ置いておける流通もなかなかないだろうし、その間きっちり温度管理(0℃~5℃)されてたかってえとそこも若干不安だったりするので、15日前後ってのは妥当な線じゃないですかね。

一週間より若いと味しないんじゃないかねえ。しないんじゃないかねえなんて言って、これは一週間より若い肉だなんて意識して食ったことないけど。

というわけで、一郎(仮名)はおいしくありがたくいただきました。

参考

↓最後のは本記事と直接は関係ないんだけど「命をいただいている」ということについて。

牛の個体識別情報検索サービス (独立行政法人家畜改良センター)
https://www.id.nlbc.go.jp/top.html
プロ伝授「スーパーでおいしい肉を買う」コツ (東洋経済ONLINE)
http://toyokeizai.net/articles/-/133640
牛の解体 〜加古川食肉センターで見学してきました。 (いただきます絵本プロジェクト)
http://itadakimasu.agasuke.net/beef01/